「コロナ時代のぼくら」が描く未来は、いま

グローバル化がもたらす、新しいかたちの連帯責任

新型ウィルス(SARS-CoV-2)が引き起こしている新型コロナウィルス感染症(COVID-19)は、私たちの世界が如何に脆弱であるかという現実を容赦なく突きつけた。

流行を止めるワクチンがない以上、感受性人口の密度をぐっと下げて、伝染がありえないほどまばらにすることによって感染拡大を防ぐしかなく、世界各国はロックダウンへと舵をきった。ゴーストタウンのようになった街。日々報道される、非線形で伸びていく感染者数と感染による死亡者数。社会的隔離(Social distancing)という、ぽっかりと空虚な孤独感と隣り合わせの生活。これまで「あたりまえ」だと思っていたことが、「あたりまえ」ではなくなった。

殊に、COVID-19が欧州で最初に広まったイタリアの惨状は目を覆うものだった。次いで、指数関数的に感染拡大が起こった米国はニューヨークの悲劇。医療崩壊と悶絶の苦しみの末の孤独死という恐怖。いまや誰もが、少なからず不安を感じながら非日常の暮らしを続けている。経済は瓦解寸前、仕事もオンラインでのリモートワークが中心。「2022年まで、長期または断続的な社会的距離(Social distancing)政策が必要になるかもしれない」という、ハーバード大学公衆衛生大学院の研究者による泣きたくなるようなシビアな論考も発表されている。それは、世界中の人やモノが緊密にネットワークされるなか、感染症はまさにネットワークに沿って蔓延し、感染の恐れからつながり自体が奪われているような感覚を覚えるような生活が、しばらく続くかもしれないと言われていることに等しい。

終わらない祈り

或る種の救いを求めるように、200万部のベストセラーと素粒子物理学博士号を持つイタリアの小説家・パオロ・ジョルダーノが執筆した話題作『コロナ時代のぼくら』を読んでみた。

それは、私たち人間が「グローバル化」によってもたらしてきた地球規模での “光” と “影”、特に “影” について洞察を深めた内容で、人文知と数理的な思考が美しいバランスを保ちながら、平易でわかりやすい言葉で書かれている。まるで罪深き人間の業への赦しを神に求めて、シンと静まり返った礼拝堂で捧げる祈りのようだった。

飛行機や電車・バス等の交通機関網の発達、ITテクノロジーの発達によるデジタルデバイスへのアクセシビリティ増大。
グローバル化がもたらしてくれた恩恵は計り知れない。

一方で、今回のコロナ禍のように不可侵だった自然に人間が侵入して森林破壊や気候変動を引き起こし、居場所をなくした未知のウィルスが野生動物から人間に宿主を変えたことによって引き起こされるパンデミックや、フェイクニュースによって引き起こされる人間の生活と経済社会への負の影響は想像以上に大きく、崩壊寸前まで私たちは追い詰められていく怖さがある。

パオロ・ジョルダーノは、警鐘を鳴らす。
今回のコロナ禍が収束したとしても、いまや地球規模課題となった環境問題に私たち人間が注意して、その解決に向けて真摯向き合わない限り、第二のウィルス、第三のウィルスは、また同様の惨禍を人間にもたらすだろう、と。

著者あとがきに、「コロナウイルスが過ぎたあとも、僕が忘れたくないこと」が収録されている。
そうなのだ。
ウィズコロナ・アフターコロナの「ニュー・ノーマル(新しい日常)」を考える上で、この空白の時間をつかって、私たちはよく考える必要がある。
コロナ過ぎ去りし後、いったい何に元どおりになってほしくないのかを。


↓↓↓ 『コロナ時代のぼくら』 パオロ・ジョルダーノ著、早川書房 

 

 

コメント

    • CommuniCARE
    • 2020年 4月 22日

    コミュニカーレが日々感じたことを、徒然なるままに綴ってまいります。
    テーマは、「WELL-BEING」について。
    様々な見地から、考察してまいりたいと思います。

    • 田中克明
    • 2020年 6月 17日

    コロナによって、私たちは色々と価値観を見直す機会をもらったのではないでしょうか。
    Well-Being 健康とか、幸福とは何かを今一度見つめ直したいです。
    単に生きることだけに重きを起きすぎると、幸せを置き去りにしてしまう。
    ウィルスに怯えて、自宅から一歩も動かないことが本当に幸せなのか。
    人と全く接触しないことが、健康と言えるのか。
    特効薬を夢見ていては、本当の幸せな未来はやってこないのではないか
    病気をすることは、人に迷惑をかけることなのか、
    今の苦痛が過ぎ去るのを待っていては、新しい幸福、新しい文化は生まれないと思う。
    新しい文化とは、新しい幸せを実感すること。
    ニューノーマルを超え、ニューカルチャーを目指したい。

      • xd310951
      • 2020年 7月 02日

      田中様、コメントをありがとうございます。はい、コロナは私たちの「Being」の在り方を見つめ直す機会となったということにつきまして、大変共感いたします。
      「Well-Being」は良質な「人とのつながり」こそが基盤だとするならば、ニューノーマルを超えたニューカルチャーの共創は、良質な「人とのつながり」起点で考えたいですね。

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